おにぎりぐらい握らせてやればいいじゃないか


 我が埼玉県発の情報が珍しく大ニュースになっています……*1

 11日に龍谷大平安を破り2回戦進出を果たした春日部共栄。その勝利を支えた女子マネージャー「まみタス」こと三宅麻未さんのエピソードが注目を浴びました。春日部共栄では練習中におにぎりを大量に食べるのだそうで、そのおにぎりを握ってきたのが三宅さん。2年間で握ったおにぎりは2万個にも及び、日刊スポーツの記事によると「おにぎり作り集中のため、最難関校受験の選抜クラスから普通クラスに転籍したほど」とも。

 これに対し、さまざまな意見が飛び交っているようで、つまり「他人のおにぎり握るために人生を棒に振った」だの「男尊女卑」だの、しまいには「こうやって球児(つまり男)を甘やかすから、家事一つやらない夫になる。自分でやれ」的な内容。
「他人のサポートをしたい」というマネージャー職の意義を全否定する動きが活発です。
 野球部のマネゆえか「男女関係」として見ている人が多いようで、ひどいツイートには「〇〇さんは女子マネージャーは部員の精神的肉便器だと言っていた」などという完全にアウトな文言まで引いて、このニュースに非難を浴びせかける始末。いやー、すごいですね。

 高校時代、我が女子部にはステキな女子マネージャーがなんと3人もいました。私は勝ち組です。うち2人は怪我や体力の限界を感じたため、プレーヤーからマネージャーに転向した転向組(2人とも私から見て後輩)。もう1人は文化部と兼部していた同級生でしたが、はっきり言いまして、彼女たちの存在がどれだけ私たちの心と体を癒してくれたか、ここに書き始めたら長文必死なほどです。

 このクソ暑い中、炎天下で臭いグローブをはめて、「ハワイ帰り?」と聞かれるほどこんがり焼けた私たちは、一日の練習が終わるとそれはもうくたびれたボロ雑巾のようでした。そんな時、「ポカリをどーぞ」と言って粉末ポカリを激薄に薄めた飲料を差し出してくれる彼女たちの存在。もちろん、マネが欠席の場合は自分たちで用意しましたが、そりゃ他人が用意してくれたものの方がおいしいんですよ。優しいマネがかけてくれる冷たいスプレーやマキロン、彼女たちが本を読んで覚えて巻いてくれるテーピングが我々の傷ついた肉体を癒していたのでした。

 彼女たちは選んで、自分の時間を使って、我々のようなポンコツプレーヤーを支えてくれたのです。ポンコツチームですから当然話題にもならなければ、内申点どうのこうのにもさほどプラスはなかったでしょう。しかも相手は(半分男になりかかったようなところもあったが)女。それでも彼女たちは私たちを支えてくれたし、私たちもそれに感謝していました。疲れている時に補佐してくれる人の存在はありがたい。

 それによって彼女たちが、志望校に進学できたか出来なかったかは知りません。しかしそれを「犠牲」だとも思わないし、彼女たちがマネージャーという立場を選んでくれたことに感謝する以外なにがあるというのか。「テーピング巻くために費やした時間で進学する大学のランクが下がったじゃねえか」なんて言う人はそもそもマネにはならないし、「おにぎり2万個」を批判している特に女性よ、あなたにマネージャーになれなんて誰も言っていないのだ。何でそんなに怒るのか。むしろ自分がマネージャーとして求められないキャラだから怒っているのだろうか。みえる、みえるぞ。嫉妬の嵐が。そして「結局男はそういう女を選ぶ」という怨嗟の声が。

 女性の人権を言うなら、一人の女性が自主的に、進学コースよりもおにぎりを握ることを選んだその選択を尊重すべきでしょう。

*1:今は東京在住ですが、心は錦